市角敏子さん寄稿文 bQ
自宅での訓練の様子と生活

No.1(盲導犬レシーダとの訓練の様子)

   10月始めには、センターから自宅に帰ってきました。訓練士のお兄さんも、今度は津田沼のホテルに泊まり込みで、私の家から病院までの往復です。
 まずは、病院までの練習です。玄関を出たところで大きく深呼吸。そして、「ライト・ゴー」です。私なりに、良しと思ったら、お兄さんに、「右に動き始めたんだから、ほめなきゃ。グットでしょ!」 あっ!そうだった!「グット・グット」。訓練中の様子の写真
 次は横断歩道、「レフト・オウダンコーナー」、「ストップ」。左右をよく聞いて正しく判断して、「オーケー・ストレートコーナー・ゴー」。タイミングを合わせて「グット・グット」。
 今度は本物のバスに乗ります。「レシーダ・ドア・ゴー」なんて言っても、そう簡単にドアは、見つからない。しかたがないので、バスに沿って手を触れながら、ドアをさがして乗り込んだら、今度は空いている席が判らない。そうだ優先席を探せばいい!と思い、すぐ左のいすの背もたれを探し、「空いてて良かったぁ、どっこいしょと」座ったとたんに、お兄さんが「レシーダ忘れてるよ!そういう時は、なんて言うの!?」  私は、「えっ?なんて言うんだろう・・・わかんない」。またまたお兄さんが「わかんないじゃないでしょう、座席の右に着けて、ダウンでしょう。ダウンしたら、グットでしょ。忘れちゃだめじゃないの!」
 どんどん自信を無くしていきました。「こんなんじゃ、いつまでたっても、病院にたどり着けないよぉ」と思いました。今になってみたら、お兄さんも大変ですよね・・・。私が教えてたらイライラしちゃうかも・・・。
 病院には、8時20分までに着きたいので、家を7時頃出ました。その時間は、バスが非常に混んでいて、途中の停留所で降りるのは、もぅ大変でした。雨が降った日には、レシーダにレインコートを着せて、病院に着いてから普通の服に着替えさせるため、タオルや着替えなど、大荷物で、病院に行くのにリュックサックをしょって行きます。まるで遠足のようです。
 レシーダは、雨が大嫌い。レインコートは着ていても、体は濡れるし、水溜まりは出来るし、道が雨に反射して、方向がわからなくなってしまいます。
 それでも、週3回病院に行かなければなりません。でも毎日のようにバスに乗っていると、バスの運転手さんも、とても親切にしてくださいます。バスから下りてきて、横断歩道を渡らせてくれたり、空いている席を教えてくれたり、混んでいる時に下りる時でも「ゆっくりで良いよ」等々…。
 私たちは、いろいろな人たちから支えられて生きているんだと思います。
 そして、訓練士のお兄さんが最後に連れて行ってくれたのは、レシーダの服を作ってくれるボランティアの方々の所でした。この服も犬の毛色に合わせたり、火を付けたり洗濯を何度もして、伸び縮みのテストをしたり、動きやすいように切り替えを入れたり、何回もいろいろな実験をしながら新しいものを考えていくそうです。赤い洋服を着たレシーダの写真
 10月11日で訓練士のお兄さんともお別れです。4週間怒られっぱなしだったけど、4時間も透析室内で、待っていてくれたり、訓練が終わる時には「レシーダをよろしくお願いします」と、涙を流しながら言ってくれました。
 私も、言いたいことは沢山ありましたが、言葉に出せたのは「ありがとうございました、大切にします」。それしか口には出せませんでした。

 国家公安委員会から「盲導犬許可証」をもらいました。これは、私とレシーダの写真を入れた証明書です。これで、盲導犬レシーダの誕生です。

 犬について何も知らなかった私とレシーダとの生活がはじまります。雨が降りませんように・・・。風がふきませんように・・・。オートバイが大きな音で走りませんように・・・。横断歩道がうまく渡れますように・・・。だれか親切な人が、広い道路を案内してくれますように・・・。バスの行き先を教えてもらえますように・・・。犬を触らせてと言われたら、どうやって「仕事中だからごめんなさい」とうまく言えるだろうか・・・。不安なことばかり考えていました。
 でも、私も「一人で歩くんだ、他人の力は借りたくない!」と、かなりつっぱていました。肩に力が入りすぎて、周りの事が何も見えていませんでした。
 病院通いも、少しずつ慣れて、今度は一人で電車にも乗ってみたくなりました。駅や電車の時は、レシーダと一緒に白杖も使います。ホームから落ちたら怖いし、痛そうです。階段や改札がわからない!そんな時には、大きな声で「改札まで行きたいのですが、どなたかお願いします。」  そうなんです。本当に怖いときには、大きな声をいくらでも出せるのに、普段バスや道を歩いていて、声が出せないのは自分にこだわりがあるからだと、わかりました。もっと力を抜いて、わからないものは人に聞くことが一番じゃないかと、思えるようになりました。
 人に聞く事は、何も恥ずかしい事ではない。つっぱりながら歩いても疲れるだけだし、そういう時は、あまり人からも声をかけてもらえないように感じました。なるようになれ。間違えても良いじゃないか。わからなくなったら人に聞く。人に甘えてもいいかなぁと、思えるようになりました。それからは外出も、気が楽になりました。「どうにかなるよっ・・・」てね!

 レシーダと私の2人6脚の、のろのろとした歩みは続いています。レシーダと共に病院に通うようになった時、レシーダは、服を2枚しか持っていませんでした。どうしようと、考えた時、透析室の主任さんが、病院の中の人に犬の服を、作ってくれる人を募集してくださいました。
 その結果、やはり透析を、されている方の奥様が、作ってくださると名乗りを上げてくださいました。訓練センターから、型紙を取り寄せてもらい、とても可愛い服を何枚も作っていただきました。
 毎日その服を着て、通院しています。皆さんから、可愛い服を着ているとほめてもらえます。
 レシーダはとても幸せです。  これからもレシーダと一緒に、何年も何年も、二人で歩いていけたらいいなと思っています。
                                                

11月11日 市角敏子

No3(いよいよレシーダと二人の生活が始まる)はこちらから


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