|
とうとう1ヶ月の共同訓練も終わり、訓練士のお兄さんも横浜に帰ってしまいました。レシーダと二人、どこか無人島にでも残された感じでした。
それでも1日おきに透析は、しなければなりません。ボーっとしている暇はないのですが、レシーダも不安そうです。
そんな不安を振り切って、本当の通院が始まりました。落ち着いて勇気を持って、さあ出かけようか。最初の横断歩道は大丈夫だったね、次は、バス停だよ。
「レシーダ、次はバスに乗るからね、バスゴーだよ。」
あれれ、レシーダがバスのところに行かない、そんなはずないのに、練習したのに。
あと少しでバス停に着くはずなのに、どうしたのかなと思っている暇は無い。とにかくバスに乗らなければ。
初めて大きな声で「すみません、バスに乗りたいのですがどなたか教えてください。」親切な人はいるものだ、これで助かったと思いました。そしてその親切な人は、
「バス停はここですよ、でもまだバスは来ていないのでちょっと待っていてくださいね。」と言って1メートルくらい手をそえてくれました。
どうしてこんなに近くまで来ているのにレシーダわかんないんだろう。何ヶ月か経った時にやっと気が付きました。(レシーダごめんね。バスが無ければいくらレシーダでも、バスゴーは、無理なんだよね。どうしようもないユーザーだね。)
そんなこんなでどうにかバスに乗れるようにはなりました。
病院前のバス停に着いてから病院までは5分もかかりません。それでも朝早いので、自転車や人は急いで通るのでとても危険です。歩道はせまくて、物は置いてあるし、電柱もあるし、自動車は止まっているし。
でもさすがに盲導犬レシーダです。そんな道もしっかりよけたり、車の前では止まったり、怖い思いをしたことはありません。
1度だけ予想もつかなかったのは、正面から走ってきた自転車が、そのまま私に突っ込んできたことです。レシーダも何が起こったのかわからないようでした。自転車はそのまま行ってしまいました。私はレシーダにけがはなかったかとても心配しました。レシーダが無事だったのでほっとしたら、なんだか私の右手が痛いなあと思って触ってみると、右手のひじから下がものすごく腫れていました。
透析の針をさすところだったので治療をするのが大変だったようです。その日レシーダは心配だったらしく、私のそばから離れようとしませんでした。
右手のけがが治るまで1ヶ月くらいかかりました。
レシーダは、私が透析が終わって家に帰っても体調の悪い時は、私から離れようとしません。ずっと隣で丸くなって私の方を見ています。そして透析の針を刺したところを「痛い?大丈夫?」と言いながらなめてくれます。そんな時私はレシーダをおもいきり抱きしめて食べてしまいたくなります。
レシーダにはドックフードしかあげていません。いい子だなと思ったり、ちゃんと言う事を聞いた時には、ほめてあげるだけです。お菓子やお肉などものすごくあげたくなります。でも我慢しなければいけないのは、飼い主である私なのです。私がお菓子を食べていると、隣でじっと見ているだけです。あげてしまうとすぐに食べてしまいます。
でもそれをしたら大変です。レシーダのお腹をこわしてしまうかもしれないし、出かけた時も目に留まった食べ物を食べたりしたら仕事になりません。
だから私も食べ物だけは朝、夕のドックフード以外は、がまん、がまんです。
寒い冬が過ぎて訓練士のお兄さんとはなかなかお話しする機会がありません。何か話がしたくてたまらなくなります。そんな時にはドックフードを頼む時に、少しだけお話をさせてもらいます。
でも、いつもいろいろな事、困ったこと、話したい事は沢山あるのにいざ話すとなると、
「レシーダかわいいよ」それだけです。お兄さんの答えもきまって、「しってます」それだけです。なんでこんなに要領が悪いんだろう。もっと言いたい事がいっぱいあったはずなのに…。自分で自分に腹が立ってしまいます。
そんな事しか言えないうちに、お兄さんは仙台に転勤してしまいました。口に出しては言えないけれど、ものすごくさびしい。そして不安でもありました。
レシーダの毛はよく抜けます。春になって毛が冬毛から夏毛にかわるときにはものすごい量の毛が抜けます。いくら掃除機をかけても、間に合いません。
それにレシーダは、掃除機が大好きです、掃除機をかけていると、すぐその後を楽しそうに付いてきます。「こりゃ!だれのために掃除してるんじゃい!!」
何を言われても喜んで付いてくるだけです。歩くだけで毛が抜けるのに「この、身の程知らずめ」 家の中じゅうがみんな毛だらけです。洗濯してもすぐについてしまいます。
レシーダの洋服は、人間が使っているシャンプーで洗濯します。シャンプーだと、犬の臭いがとれるので便利です。それようになるべく安いものを買ってきます。
1年経ってもどうしても苦手な事があります。それはJR津田沼駅から、袖ヶ浦行きのバスに乗る時に、バス停に下りる階段が大嫌いで階段のところに来ると、そこだけよけてしまいダイエーの方に行こうとします。わからないのではなくて、わざわざよけて行くのです。それだけはいまだにどうしてか分かりません。
こんな時こそお兄さんにフォローアップ(再訓練)お願いしたいんだけど忙しそうで…
だから今でも「行きはよいよい帰りはこわい」です。
盲導犬レシーダには、もういくつかの仕事があります。
それは、盲導犬普及のための募金活動、皆に知ってもらうためのデモンストレーション、写真撮影…そして家に帰ってからのだっこです。私が忘れていてもしっかり呼びに来て自分の気に入った場所まで着いて来いとばかりに、手でここに座れと言います。そして言われたように座ると、今度は足を広げてとばかりに足の間に入ってきます。
そうしているうちにレシーダがくるくる回り始めます。そして位置を決めたらそこに頭から突っ込んできてだっこです。
「今日は頑張ったんだからだっこするのはあたりまえよ」
「頑張らなくたっていつだってだっこしてるのに」
でもついつい可愛いね・いい子だね…なんてナデナデしちゃったりして。そんな時でも食べるものは規定どおり。そこはシビアなのです。
1月24日 市角敏子
No4(レシーダと家族の話)はこちらから
|