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レシーダと共同訓練を受けたのは、2002年9月16日から10月12日までの4週間、日本盲導犬協会神奈川訓練センターでした。この4週間の間に犬との歩行訓練はもちろん、排泄の仕方、えさのやり方、ブラッシングやシャンプーの仕方、犬の可愛がり方など、殆どが家庭のペットの飼い方とは違い、とまどったり、もう無理かと思うことも何度もありました。
それでも続けてこられたのは、レシーダが文句も言わず、ただ、ひたむきに私の言うことを聞いてくれようとした事と、津田沼中央総合病院が盲導犬の受け入れを許可してくださっただけでなく、透析のベットの下にレシーダをおかせていただける事と、そして盲導犬を理解してもらうために、透析患者さんに手紙を出して受け入れ準備をしてくれていた御蔭だと思います。
共同訓練での最初の二日間は、犬なしで命令語の練習から始まりました。命令語は、35種類ぐらいあります。ほとんどが英語なのですが、曲がり角は「カド」。横断歩道は「オウダンコーナー」。段差は「コーナ」。
盲導犬は左側歩行なので、左に寄らせることを「ヨッテ」。改札は「ゲート」。切符は「キップ」。その他にも、「ドア」「チェアー」、待っている時は「ウエイト」。主人がいないで 長く待つ時は「ステイ」。座らせる時は「シット」。ふせは「ダウン」。主人の左側にぴったりついて歩くことは「ヒール」。
それを間違えないように確実に伝えるには、手足も一緒に動かさなければなりません。「ライト」または「レフト」と言いながら、手足も左右に向けます。まっすぐは手足を前に出して「ストレート」です。歩行時の命令の初めは「ゴー」をつけます。「ストレート・ゴー」で、まっすぐ進め。命令の解除は「オーケー」です。これは良くやったの「オーケー」とは違います。ほめる時は「グット」です。この「グット」は、命令を聞いて行動を起こしてくれた直後に言わなければなりません。それは、犬が「せっかく命令を聞いたのになんにも言ってくれないのか」と、すねてしまったら大変だからです。
これらの命令語は、まちがえたら大変です!命にかかわりますから。この辺までで、もう訓練士のお兄さんに何度も何度も「やりなおし」と怒なられっぱなし。
そして、ぬいぐるみを使ってハーネスの付け方の練習です。とてもがっちりしたベルトなので、なかなか巧くはめることができません。
1年たった今でも、ハーネスのつけ・はずしは、苦手です。
訓練が始まって三日目に、初めて犬との対面です。その時に名前・生年月日・出生地・名前の由来などを教えてもらいます。レシーダは、2000年1月9日に横浜で生まれました。犬種はラブラドール・リトリーバーの雌。毛色はイエローです。名前の由来は、アメリカの土地の名前の「レシード」から、雌なので「レシーダ」と、つけたそうです。
ここから、本当の共同訓練が始まります。毎朝、6時30分に起きて、ドッグフード120グラムとお水をやります。その後、排泄です。これは合図があって、小が「ワン」。大が「ツー」。この「ワン・ツー」を、何度も繰り返し「ワン・ツー・ワン・ツー」です。そして、大小したら必ず「ワンツー・グット」です。この時「グット」を忘れたら、次の時にはしてもらえないので大変です。
それから、やっと人間の朝食です。その時も、レシーダは一緒です。センターの食堂まで連れて行って、テーブルの下で待たせます。自分の食事をしながら、レシーダが立ちあがったり、歩いたりしないように、常に注意をしなければいけません。そうしないと、レストランなどでの外食が落ち着いて出来ないし、食べ物の我慢をさせられないと、困るからです。
10時ごろから2時間ぐらい住宅地を歩行訓練です。訓練士のお兄さんに、「ハーネスは左手に握って、姿勢は正しく。命令は大きな声ではっきりと、手と足をつけるのを忘れずに」、その上「最初の角は右。2番目は左。3番目の角は、まっすぐ。4番目は…」と言われ、歩き始めた直後に、後ろから大きな声で、「レシーダ頑張っているんだから、ほめなきゃ!」と・・・。「いっぺんに、よくそれだけの事が言えるよなぁ」と、ぶつくさ言ってると、「レシーダの動きに付いて行ってない!集中して!」。私は、ただひたすら、「はいぃぃ!」
昼食をはさんで、2時頃から、また2時間ぐらい歩行の練習。その後、車に乗って、今度は、透析のために病院まで行きます。
そして4時間。透析の間は、訓練センターのふたりのお部屋で、レシーダは、お留守番です。
夜9時に、センターに帰って来て、夕食です。食事の時は、夜も連れて行きます。そして、1日の最後の「ワンツー」です。1日に5回ぐらい「ワンツー」をさせます。それから、1日の復習と学科の勉強です。

毎日、これの繰り返し。透析のない日は、学科を受けます。これは、盲導犬の歴史・犬の生態・病気・予防注射・ワクチン、そして、道路交通法などを覚えます。まるで車の免許と同じですね。
日曜日は、歩行はお休みです。でも、犬との遊び方の練習です。犬を飼ったことのない私にとっては、これが一番大変でした。なにしろ、大きい犬ですので、からだ全体で遊ばなければいけません。すぐに疲れてしまう私には、たとえレシーダがおとなしいと言われても、持ち上げて突き飛ばすなんて遊びは、すぐに息切れしてしまいます。
2週間ぐらいして今度は歩行の練習の場所が変わってきます。住宅街からデパート・駅の階段・エスカレーター・エレベーターの乗り降り・レストランで食事です。
訓練の最後は、センターで卒業試験です。試験官はセンター長です。訓練士のお兄さんから「お願いだからレシーダ持って帰ってね」と言われ、試験に落ちるわけにはいかない、頑張るしかないねっ・・・と思いました。
曲がり角を、11カ所指示されて、さぁスタートです。その時は、もう何も注意はありません。ハーネスは、しっかり持って。姿勢は正しく。命令は、はっきりと大きな声で。これまで、習ってきた事を、ひとつずつ思い出しながら。曲がり角を忘れないように、「レシーダ、頼むよぉ〜」と、声をかけながら…。
この時間の、何と長かったこと。1時間ぐらいが、1日中に感じました。テストが終わって、ホッとした訳でなく、その後の判定を聞くのが怖くて怖くて、体が震えていました。
結果は、「このままなら、すぐに明日からでも、レシーダと歩くことが出来ると思います。これからは、胸を張ってレシーダと歩いてください」と、言う判定をいただきました。
でも私は、さらに緊張が強くなりました。そして、不安にもなりました。「こんな3週間の練習だけで、ひとりで歩くなんてできないよぉ」。お兄さんは、「一人じゃないよ。レシーダと一緒だよ!これだけ練習したんだから、大丈夫なはずだよ!それに、これからは家に帰って病院までの練習だから、弱音をはいてる暇はないよ」と、励ましてくれました。
そんなこんなで、家に帰る日も近づき、訓練センターでの最後の訓練はシャンプーとレシーダの服の着せ方の練習でした。
10月始めには、センターから自宅に帰ってきました。
10月14日 市角敏子
No2(自宅での訓練の様子と生活)はこちらから
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